第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
『「気」をコントロールする修行っていうのは、大人でも苦労する鍛錬だ。ハイリアみたいな幼い子どもが覚えるとなると、時間はかかるだろうな。
それにハイリアは気脈の流れが変わっていたからな、少々覚えるのに苦労するかもしれない』
『気脈の流れ? マゴイの流れが変わっているのかい? 』
『ああ、ハイリアを川から助けた時に気脈を見たんだが、ハイリアの「気」の流穴は、普通の者よりやけに多かった。まるでマゴイが外と触れやすいように、通気口が開いているといったかんじでな。
あの時は、なぜかわからなかったが、婆さんの話を聞いて少し納得したよ。
今まで魔法を使う者の気脈をみたことはないが、もしかしたらマゴイを変換しやすいように、魔導の力をもつ者にはそういう特徴があるのかもしれないってな。
だけどな、あれじゃあ体内のマゴイが溢れすぎて、「気」をコントロールすることに手間取るはずなんだ。
ハイリアはまだ小さいし、身体も細くて脆弱だ。多量のマゴイを抑えて扱うだけの身体ができていない』
『それでは、ハイリアにマゴイ操作を教えたところで、上手く扱えないんじゃないのかえ? 』
『そうだろうな。けれど、解決策がないわけでもない。マゴイ操作をするにあたり余分になる「気」の流穴を、全部閉じてしまえばいいんだ』
── 何言ってやがる……!?
『「気」の流穴を閉じるじゃと!? そんなことをしたら、閉じ込めたマゴイはどうなる? 』
『どうもしないさ。開きっぱなしになっている蛇口を、ちょうどいい具合に閉めてやるだけだから、元々身体にあるマゴイ自体はそのままさ。
ハイリアの身体をマゴイ操作がしやすいように変えてやるんだよ』
『この子の体質を変えるっていうのかい? 』
── 体質を変えるだと!?
『そうだ、ヤンバラに伝わる鍼治療でな。
余分な流穴を閉じてしまえば、マゴイが一度に多量に溢れる心配もなくなる。「気」をコントロールすることに手間取ることもなくなるはずだ。
あとは身体を鍛えさせて肉体を強化させれば、幼いハイリアでも、少しずつ体内に宿すマゴイを扱えるだけの器ができ上がるだろう。
時間はかかるが、マゴイ操作を身につけられるようになるはずだぜ。元のマゴイが整いさえすれば、乱れちまう魔法だって治まるはずさ』