第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
── おいおい、こいつが寝ている間に、こんなこと決めちまっていいのか!?
真っ白なチビは勝手に交わされた話も知らずに、バカみたいに穏やかな顔して男の膝元で眠り込んでいる。
ムトはそれを見て微笑むと、腰元から小さな小箱を取り出していた。
蓋をあけたその中には、無数の微細な針が列を作って並んでいる。
『俺がいない間、また人を傷つけちまう魔法が暴走したら大変だろう?
応急処置みたいなもんだが、少しだけハイリアの「気」の流穴を閉じておいてやるよ。マゴイが急激に溢れ出すことを一時的に防いでくれるはずだ』
そう言って、ムトは膝元で眠るハイリアの身体に触れると、マゴイ操作で気脈の流れを読み取り、眩い光を放つマゴイの流穴を指で探り当てていた。
箱の中から細い針が一つ引き抜かれ、その針に沿って淡いマゴイの光が灯される。
『感謝するわい。お主のような理解ある者の側で育つことができれば、ハイリアも飾らずに成長できるはずじゃあ。大きくなったハイリアを、おばばに見せにきてくれのう』
『もちろんだ。一回りも、二回りも成長させて連れて来てやるさ』
にっとムトが老婆に向けて歯を見せて笑い、眠るハイリアの真っ白な肌に、微細な針が静かに埋め込まれた。
ジュダルが目を見張る前で、眩いマゴイの流穴が一つ、光を細くして縮まるように消えていった。