第6章 盗賊の砦
モルジアナの蹴り技の威力に少々呆れながら、入り口が開いた牢屋中に入ると、そこにはたくさんの人達が囚われていた。百人近くはいるように見える。
牢の中にいた人達は、突然やってきたハイリア達に驚き、状況がつかめず戸惑ってざわついた。
「誰か入ってきたぞ? 」
「なんだ、なんだ? また誰か捕まったのか? 」
「それにしちゃあ、騒がしいよな。いったい外で何が起こってるんだ? 」
ハイリアはすうーっと息を吸い込むと声を張り上げた。
「私たち、助けに来ました! みなさんここを逃げましょう! 」
「逃げるったって、手足がこれじゃあ無理だろ! 」
ハイリアの言葉を聞くなり、側にいた男が声を上げ、自らにつけられた枷を見せつけた。
よくみると、囚われている人達のすべての手足に、鉄枷がつけられていた。
「大丈夫です。みなさんの枷の鍵なら恐らくこの中です! 」
モルジアナがそう言って、奴隷商人から奪ってきた袋を開けると、中には無数の枷の鍵が入っていた。それから貴金属も。
助かるとわかった牢屋内から歓声が沸き上がり、早く鍵をくれと言葉が飛び交った。
ハイリアは、モルジアナの行動に感心しながら、彼女と手分けをして、袋の中の鉄枷の鍵を、牢内に捕まっている人達に配り歩いた。
あっという間に牢内は、枷を外す作業がもくもくと続けられることになった。
枷が外れた人達は、まだ枷が外れていない人のために、合う鍵を交替で回しながら探す作業を、ハイリアと同じように手伝ってくれたり、盗賊団の残党が襲って来ないか、扉の外の見張りをするなどしてくれている。
枷を外す作業を手伝いながら、ハイリアは捕まっていた人達に話を聞くことができた。
ここにいる多くの人は、荷台を馬車で運びながら国境を越える手前で、盗賊団に大きな岩を落とされて、気絶させられた時に捕まったらしい。
旅をしながら行商をしていると聞いたので、きっとこの人達が、キャラバン長が話していた襲われたキャラバンの一員達なのだろう。
助けられずにいたら、みんな奴隷にされていたのだろうか。そう思うと恐ろしい話だ。
ナージャはというと、ようやく両親と出会えたようで、さきほど抱き合っている姿を見かけた。
泣きながらも嬉しそうに抱き合っている家族の姿が、ほんの少し羨ましくも感じた。