第6章 盗賊の砦
モルジアナは、先程から知り合いを見つけたらしく、さっきからその子と話し込んでいる。
青い髪の小さな少年だ。
モルジアナの弟かと思ったけれど、全く容姿が似ていないし、きっと違うだろう。
故郷のなじみなのだろうか。それにしては、モルジアナの接するかんじが違う気がする。
だとしたら、あの子はなんなのだろうかと、ハイリアは気になっていた。
あの少年の周りだけ、ルフが変だからだ。ざわついているというか、やけに光っているというか、他の人と明らかに違うのだ。
ああいうルフのざわつきを、ハイリアはみたことがあったが、その者との明らかな色の違いを思い出して、考えるのをやめた。
「大変だ! 盗賊達が! 」
扉の前で見張りをしていた男達が突然慌ただしく叫んだ。
「どうしたの? 」
ハイリアが騒ぐ男に駆け寄ると、男は地下の通路を指さした。
見ると、いつの間にか煙が通路に充満して始めていた。それも匂いが普通じゃない。
── この煙、何かの薬草かもしれない!
逃亡を恐れた奴隷商人達が、通路を密閉したようだった。
急いで通路を脱出しないと、また盗賊たちに捕まってしまうかもしれない。
地下牢の中まで入りこんできた煙に、一気に牢内が混乱する。
「どうしよう、どうしよう……! 」
みんなが慌て、泣き叫ぶ者まで出る中、必死で袋の中を探っていた男が突然声を上げた。
「アラジン、あったぞ!! 」
そう言って、男が袋から取り出したのは、金色の縦笛。
それを急いで手渡したのは、さきほどモルジアナが話していた青い髪の少年だった。
名前をアラジンというらしい。あの笛がいったいなんだというのだろうか。
「よかった。ウーゴくん! 」
嬉しそうに縦笛を受け取ったアラジンは、ハイリアが疑問に思う中、大きく息を吸い込み笛に息を吹き込んだ。
とたんに、笛からにょきにょきと姿を現したのは、青い筋肉質の巨人の身体だった!