第6章 盗賊の砦
付けられていたはずの足枷はなくなっていた。
広場に放されている、獰猛で、巨体の獣たちを相手取りながら、リズミカルに、適確に足技を決めていく。
その攻撃は圧倒的で、恐ろしいはずの獣たちが小動物にでもなったかのような錯覚を受けるほどだった。
「すっごーい! 」
ハイリアは思わず見とれてしまった。
圧倒的な攻撃、跳躍力、鋭い動き。あれがファナリスの戦い方。
襲いかかる無数の獣たちの攻撃を避け、次々と、一撃で倒していったモルジアナは、巨大な白虎を最後に蹴り倒すと、地面に降り立った。
後ろにはナージャの姿もある。無事だとわかりほっとした。
モルジアナの強さを知った、奴隷商人のフォティマーは、震えながら地面に座り込んでいた。
そこへ威圧をかけながら詰め寄ったモルジアナだったが、降参した様子のフォティマーにとどめはささなかった。
変わりに袋と鍵を受け取り、彼女がナージャと共に歩き出したのを見て、ハイリアは声をかけた。
「おーい、モルジアナ! 」
手を振ったハイリアの姿を見て、二人は驚いた様子だったけれど、すぐに笑顔が戻った。
盗賊の残党から場所を聞き出し、ハイリア達は、囚われているというナージャの両親や、キャラバンの一行が捕まっているという地下の奥にあった牢屋へと辿り着いた。
モルジアナが、フォティマーから奪った鍵を試すが、彼の最後の悪あがきなのか、どの鍵を試しても扉は開かなかった。
「どうしよう……」
ナージャが不安がる中、ハイリアは鍵を壊そうと手にマゴイを溜め、錠に触れようとしたが、モルジアナに止められた。
「大丈夫です。こういうときは扉を壊せばいいのよ」
そう言いながら、モルジアナが足を振り上げて扉へ蹴りを入れると、すぱーんと気持ちよい音を立てて、扉は見事に真っ二つに割れてしまった。