第6章 盗賊の砦
盗賊たちの集会場となっているのか、そこには十数人の盗賊達が酒を飲んだりしながら、のんきにくつろいでいたが、突然独房から飛び出してきたハイリアをみて、盗賊達がざわめいた。
「おまえ、どうやって出てきた!? 」
「さっきの奴、戻ってこないぞ。まさかやられたのか!? 」
戸惑う盗賊達を尻目に、ハイリアはさっと全体を見渡して、辺りを把握するように意識した。
窓はなかった。通路は奥にみえるが、近くに下へ降りる階段も見えない。
恐らく一階か、地下といったところだろう。
「おい! 商品が逃げ出したぞ! 」
盗賊達が声を上げ、次々に刃物を取り出した。
応援を呼ぶ声に、通路の奥からも、彼らの仲間が駆け込んでくる。
数の多さに嫌気がさしたが、そうも言っていられない。
刃物を振りかざして襲いかかってきた盗賊をみて、ハイリアは攻撃するために前へ一歩踏み出した。
刃の太刀筋をよみながら、ハイリアはするりと攻撃を避けると、相手の顎を下から天井に向かって突いた。
上に少し身体が飛び上がり、そのまま気を失った男は、刀を落としながら後ろへ倒れ込んだ。
そのまま次へ目標を変え、同じ事を繰り返す。
まるで通り過ぎる風のように、一撃で急所を突き、一人、またひとりと倒していくハイリアを見て、残党がどよめきだした。
かすりもしない仲間の攻撃を見て、唖然と立ち尽くす者までいる。
「なんなんだよ、コイツ。あの赤髪の小娘でもないのに強ぇじゃねぇか!! 」
真っ白な少女の側に、次々と倒れていく仲間の姿をみて、怖じ気づいた残党が後ろに下がっていった。
迫る少女をみて、カタカタと震えながら刃物を向ける者さえ現れる。
「どいて! 何もしないなら手は出さないわ」
士気をなくし、呆然と立ち尽くしている残党を、手で払いのけるようにすると、戦う意思のない者は逃げるように道をあけた。襲いかかってくる者、邪魔する者だけを倒し、前へ進む。
剣を振りかざしてくる残党を倒して、通路沿いにあった階段を急いで駆け上がると、見覚えのある砦の広場が見えてきた。
そして、広場へ飛び出した瞬間、ハイリアは目を奪われた。
モルジアナが空を飛んでいたからだ。