第19章 緋色の夢 〔Ⅳ〕
「やだ、離してよ! 」
体を押しのけようとしたが、絡められた腕で押さえつけられた。
「ったく、抵抗しやがって! もう少し俺を信用しろよ! 今は何もしねぇーから」
「じゃあ、離してよ! 」
「い、や、だ、ね! 」
わざとらしく、自分の言い方を真似てきたから腹が立った。
押さえつけてくる体を払いのけようと、腕にマゴイを溜める。
「おい、それ打ち込んできたら、さっきの続きしてやるからな」
「ひどっ! それ脅しじゃない! 」
「いいから、少し黙ってろ。おまえが何もしてこなければ、俺も何もしねぇーから……」
抱きついている時点で、もうすでに何かしているじゃないかと思いながら、ハイリアは仕方なく腕に溜め込んだマゴイを拡散させて、体の中で消化させた。
イライラと納得はできないまま、ジュダルに抱きしめられる。
さきほどみたいに、すぐに悪戯してくるかと思ったのに、本当に何もしてこないから余計に恥ずかしく感じた。
手を出してきたら、すぐにマゴイを打ち込んでやろうと思っていたのに、拍子抜けだ。
―― 何なのよ、いったい……。
ただ抱きしめられているだけでも、顔は火照って熱かった。
静かにしていると、落ち着かない自分の鼓動が聞こえ始めて、ジュダルに聞こえているんじゃないかと焦りを感じた。
早い鼓動の中に、別の同じ音が伝わってきて、ハイリアは目を見開いた。
トクン、トクン、と一定のリズムで繰り返される胸の鼓動は、互いに乱れながら早いリズムを刻んでいた。
なぜジュダルも早い鼓動をしているのだろうか。
落ち着かない、忙しいリズムは、だんだんと合わさって、いつしか同じリズムを刻み始めた。