第19章 緋色の夢 〔Ⅳ〕
「触らないでよ! 」
気づけば、ジュダルの腕を掴んで、大きく背負い投げていた。
勢いよく投げられて、背中から地面に落ちたジュダルは、何が起きたかわからない様子で呆然としていた。
目を丸くして地面に寝そべる彼と目が合ったとたん、顔から火がでるんじゃないかと思うくらいに、頬が急激に熱くなった。
きっと顔は真っ赤になっているのだろう。
恥ずかしくなって目を逸らしたとたん、ジュダルは突然、吹き出した。
「そうか、おまえやっとわかったのか! 」
笑い出したジュダルの声が響いて、なんだか腹が立った。
あのひどい悪戯を思い出して、恥ずかしさと共に、腹立たしさが蘇ってくる。
「もー! うるさいわよ! また、変なことしたら投げ飛ばすからね! 」
声を張り上げて怒鳴ったというのに、ジュダルは腹を抱えて笑い転げていた。
「あははっ! おっかねーな! 」
「笑い事じゃないわよ! 」
先程された羞恥に対して怒っているというのに、ジュダルはなんだかとても楽しそうだった。
ふくれ面で黙り込んでいると、ようやく笑い声が止まった。
起きあがって座り込んだジュダルと、距離を置いて立っていると、にやにやと面白そうにこちらを眺めてきたから、むかついた。
「そう離れるなよ、ハイリア。もうしねーから、もっとこっちに来いよ! 」
ちょいちょいと指でこちらに来いと示しながら、ジュダルはわざとらしい笑顔を浮かべていた。
そう言って、何もしなかったことなんてないのだから、説得力の欠片もない。
「いやよ、絶対なんかしてくるもん」
「しねぇーって! 」
無邪気に笑っているが、絶対、嘘だ。