第19章 緋色の夢 〔Ⅳ〕
軽はずみな態度で、何てことをしてくれたのだろうか。
先程のひどい悪戯を余計に腹立たしくも感じた。
「わかったならば、良かったではないか」
「よくないです! 」
あっさりと紅炎に言われてしまって、恨みたくもなった。
こんなこと知らないでいる方が、まだ良かったのかも知れない。
真っ赤な顔で座り込み、いつまでもぐずぐずと動けないでいるハイリアに、紅炎は茶色い巻物状の書簡を差し出した。
「ほら、動いてみろ。お前に仕事だ」
「ひどいですね、紅炎様も……」
「そう言うな。お前には、やってもらいたいことがあるのだ。これくらいで身動きが取れなくなってもらっては困る」
「……わかりましたよ」
むすっと膨れながら、ハイリアは紅炎が手渡してきた書簡を受け取った。
どこに届けるのだろうかと、書簡を回し見てどこにも宛名がないことに気づく。
「……紅炎様。これ宛名がないですよ? 誰に宛てられた書簡ですか? 」
「それはお前宛の書簡だ、ハイリア」
「え? 」
驚くハイリアに向かって、紅炎はうっすらと笑みを浮かべていた。
「武官としての初任務だ。三ヶ月後に白瑛の陣に加わり、共に極東平原の統一に力を尽くせ!
これは煌帝国の将軍としての命だ。細かいことは書簡にて確認しろ! 」