第6章 盗賊の砦
「処分って……!? 」
その言葉が何を意味するか、ハイリアには想像が付いた。
恐ろしいことに、奴隷は物のように扱われる。
使い物にならなくなったという判断がされた対象者の末路は聞いたことがあった。
物のように捨てるのである。ようは殺すということだ。
とんでもないことを言い出したフォティマーを、ハイリアが睨み付けると、彼はにやりと嫌な笑みを浮かべた。
「そうね、高級品のファナリスや、アルビノのお嬢さんには関係ないかもしれないわね。
そこのアルビノのお嬢さんはわかっているみたいだけれど、ファナリスのお嬢さんは知らないのかしら。良い機会だからみせてあげるわ」
フォティマーはそう言うと、ナージャとモルジアナだけを引っぱり、独房の外へ出ていった。
重い扉が閉められて、ハイリアは一人独房に残された。
最悪だった。このままじゃナージャが危ない。
あんな足枷をつけられたままじゃ、モルジアナがいくら強かったって、動けないはずだ。
あの枷を外せるのは、きっと自分だけなのに。
どうにかして、二人に追いつくにはこの独房から抜け出すほかない。
できれば、キャラバンの仲間が救出に来たときに、騒ぎに乗じて上手く逃げだしたかったのだけれど、状況が変わってしまった。
覚悟を決めて、連れてかれた二人を助けるために、ハイリアは手足の拘束を解こうと、身体をもぞもぞと動かして、体勢を整えた。
まずは足枷を取り払うために、ハイリアは意識を集中させ、一気に力を込めた。
―― 魔力操作!!
淡い光が足首へ集中し、ハイリアの指示によってねじ曲げられた力が、鉄の枷へと向かった。
とたんにパキリと音をたてて鉄枷にひびが入ると、足枷が大きく砕け、地面にカラカラと音をたてて落ちた。
ハイリアは、自由になった足の腱をゆっくりと伸ばし、動きを確かめた。
だいぶ動かしてなかったために、凝り固まったような硬さを少し感じたけれど問題はなかった。
今度は手枷へと意識を集中させる。
淡い光と共に手枷にひびが入り、同じように砕け落ちた。
床に落ちて金属音を聞きながら、腕の調子もみる。
ぐるぐると腕を振り回し、指の腱も伸ばしてみたが、問題はない。