第6章 盗賊の砦
「あなたまで捕まってしまうとは予想外でした。なぜ助けになんて来たのですか? 」
「なぜって、仲間だからよ。一人で盗賊団に飛び込んでいったって知って、ほんとに心配したんだから! 」
「私を……? 」
「当たり前じゃない! ほんとは私が助ける予定だったんだけれど……」
まさかこんなドジを踏むとは思ってもみなかった。自然とため息が出た。
きっと、キャラバンでは自分までがいなくなったから、今頃、大騒ぎのはずだ。
ライラやサアサも心配していると思うと、申し訳なくなってきた。
黙り込んでしまったハイリアを見て、モルジアナが言った。
「大丈夫です。私が絶対、なんとかしますから! ハイリアさんも、奴隷に何てさせません! 」
にっこりと微笑んだその顔は、少しぎこちなかったけれど、胸の中に温かいものが染み渡るのを感じた。
「ありがとう、モルジアナ。キャラバンのみんなも直に助けにくるはずよ! 私もなんとかしてみせるから、隙を見てみんなで逃げましょう! 」
勇気づけてくれたモルジアナに、ハイリアも笑い返した。
それからハイリアは、モルジアナと一緒に外の様子を伺いながらひたすらチャンスを待った。
静かに食事を取りながら、幾日たったかわかるように、岩壁に一日ごとに印をつけて、時々泣き出してしまうナージャを二人で励ました。
そして、五日後の朝。予想外の出来事が起こった。
ナージャが、高熱を出したのである。
急病人がいると聞いて独房に駆けつけてきた、奴隷商人のファティマーは、熱にうなされているナージャを見るなり言った。
「ああ、これはもうダメね。仕方ないわ、これいつものようにしておいてくれる? 」
そう言って、ナージャを物のようにつかむと、子分に「処分して」と伝えたのだった。