第19章 緋色の夢 〔Ⅳ〕
「それで『銀行屋』の人達が、ジュダルの神事にも関わり、陛下の拝謁も行っているわけですね。なんだかやっとわかってすっきりしました。ありがとうございます、紅炎様! 」
にっこりと笑みを浮かべてみせたが、いつも穏やかな笑みを返してくれる紅炎の表情は、なぜか硬かった。
「悩んでいるようであったから、教えておいた方が良いとは思ってな。しかし、あの組織の者どもと親しくしようなどとは思わぬことだ。彼らをよく知らぬのは、お前だけではないのだ」
「え? それって……どういうことですか? 」
紅炎の言葉に、緩んでいた表情がしだいに硬くなった。
「言った通りだ。この国に巣くうあの者どものことは、よくわかっていない。お前は我が国の武官であり、ジュダルの側近なのだ。宮廷の事情も少し頭に入れておけ。来たる時に、力にならぬようでは困るのだ。
お前がジュダルの抑止力となっている状態は、維持しておきたいからな」
言われたことに愕然とした。
―― それって……、私……。
「……ジュダルを、監視しろというのですか? 」
紅炎はジュダルを信用していないのだろうか。
まさか、そのために今の位置に配属されたのかと、疑惑が渦巻いた。
「そこまでしろとは言っていない。これからもジュダルの側にいてくれればいい。あいつは『マギ』だ。あの者どもとは一線を画する。この国に必要なものだ」
まるで駒か何かのようにジュダルのことを話す紅炎は、なんだか恐く感じた。
ジュダルと話すときに見る、あの笑顔は偽りなのだろうか。今まで見えていた紅炎の姿がよくわからなくなって、ハイリアは困惑した。
「そう硬くなるな、ハイリア。今まで通り、普通にしていればいい。あの組織の者どもには気をつけろと、警告しただけだ」
「はい……」
「すまない、お前があの者どもを、深追いするようなことになると、良くないと思ってな。急な話で驚いたとは思う。気分を害させたようで悪かった」
浮かない表情のままのハイリアを見て、紅炎はため息をついた。