• テキストサイズ

【マギ*】 暁の月桂

第19章 緋色の夢 〔Ⅳ〕


「それで『銀行屋』の人達が、ジュダルの神事にも関わり、陛下の拝謁も行っているわけですね。なんだかやっとわかってすっきりしました。ありがとうございます、紅炎様! 」

にっこりと笑みを浮かべてみせたが、いつも穏やかな笑みを返してくれる紅炎の表情は、なぜか硬かった。

「悩んでいるようであったから、教えておいた方が良いとは思ってな。しかし、あの組織の者どもと親しくしようなどとは思わぬことだ。彼らをよく知らぬのは、お前だけではないのだ」

「え? それって……どういうことですか? 」

紅炎の言葉に、緩んでいた表情がしだいに硬くなった。

「言った通りだ。この国に巣くうあの者どものことは、よくわかっていない。お前は我が国の武官であり、ジュダルの側近なのだ。宮廷の事情も少し頭に入れておけ。来たる時に、力にならぬようでは困るのだ。
 お前がジュダルの抑止力となっている状態は、維持しておきたいからな」

言われたことに愕然とした。

―― それって……、私……。

「……ジュダルを、監視しろというのですか? 」

紅炎はジュダルを信用していないのだろうか。

まさか、そのために今の位置に配属されたのかと、疑惑が渦巻いた。

「そこまでしろとは言っていない。これからもジュダルの側にいてくれればいい。あいつは『マギ』だ。あの者どもとは一線を画する。この国に必要なものだ」

まるで駒か何かのようにジュダルのことを話す紅炎は、なんだか恐く感じた。

ジュダルと話すときに見る、あの笑顔は偽りなのだろうか。今まで見えていた紅炎の姿がよくわからなくなって、ハイリアは困惑した。

「そう硬くなるな、ハイリア。今まで通り、普通にしていればいい。あの組織の者どもには気をつけろと、警告しただけだ」

「はい……」

「すまない、お前があの者どもを、深追いするようなことになると、良くないと思ってな。急な話で驚いたとは思う。気分を害させたようで悪かった」

浮かない表情のままのハイリアを見て、紅炎はため息をついた。
/ 677ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp