• テキストサイズ

【マギ*】 暁の月桂

第19章 緋色の夢 〔Ⅳ〕


「あ、いえ……。実は今日、あまり話したことがなかった、従者の一人と話す機会があったんですけれど……。なんていうか、変わった人で……。
 私、あの人達のことをよく知らないので、どんな方たちなのだろうかと思ったんです」

「ジュダルから聞いていないのか? 」

意外そうに言われて、なんとなく恥ずかしくなった。

側仕えなのに知らないということが、なんだか恥のように感じたからだ。

「ジュダルは、世話役ってことくらいしか、あんまり教えてくれませんから。
 みなさんが『銀行屋』と呼ばれているのは知っていますけれど、お恥ずかしながら、なんでジュダルの従者なのかも実はよくわかっていないんです」

「あいつはそんなことも、まだ話していないのか……」

呆れた様子で紅炎はため息をついた。

「……ならば、少しだけ教えてやろう。『マギ』の従者を果たしている奴らは、この国では陛下の経済顧問を務めている者達だ。主に財政の助言を行っている。
 『銀行屋』と呼ばれるゆえんもそこからだろう」

「経済顧問って……、そんなすごいことしている人達だったんですか?!
 でも、じゃあ、なんで彼らがジュダルの従者なんですか? 」

国の財政にまで関わる組織が、『マギ』の従者だなんてますますわからない。

「ジュダルは、幼少期からあの『銀行屋』とよばれる従者たちに育てられたのだ。あの者どもは、ジュダルの育て親ということだ。
 俺も詳しくは知らないが、ジュダルはこの国にやってくる前に、『マギ』をあがめる従者共に拾われて、赤子の頃から育てられたらしい」

「え……、ジュダルってはじめから、この宮廷にいたんじゃないんですか? 」

意外なことに、ハイリアは驚いた。

宮廷を我がもの顔で歩いているから、てっきりここで生まれたのだとばかり思っていた。

「あいつが『マギ』としてこの国に連れてこられたのは、幼い子どもの頃のことだ。
 宮廷に従者たる者どもが住まうようになったのも、ジュダルが奴らに連れられて煌帝国へやってきてからだな」

「そうだったんですね……」

ジュダルが彼らを『親父ども』と呼ぶ理由がようやくわかった。

知らなかった事が明るみになって、頭の中の疑問が少し整理されたかんじだ。
/ 677ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp