第19章 緋色の夢 〔Ⅳ〕
「あ、いえ……。実は今日、あまり話したことがなかった、従者の一人と話す機会があったんですけれど……。なんていうか、変わった人で……。
私、あの人達のことをよく知らないので、どんな方たちなのだろうかと思ったんです」
「ジュダルから聞いていないのか? 」
意外そうに言われて、なんとなく恥ずかしくなった。
側仕えなのに知らないということが、なんだか恥のように感じたからだ。
「ジュダルは、世話役ってことくらいしか、あんまり教えてくれませんから。
みなさんが『銀行屋』と呼ばれているのは知っていますけれど、お恥ずかしながら、なんでジュダルの従者なのかも実はよくわかっていないんです」
「あいつはそんなことも、まだ話していないのか……」
呆れた様子で紅炎はため息をついた。
「……ならば、少しだけ教えてやろう。『マギ』の従者を果たしている奴らは、この国では陛下の経済顧問を務めている者達だ。主に財政の助言を行っている。
『銀行屋』と呼ばれるゆえんもそこからだろう」
「経済顧問って……、そんなすごいことしている人達だったんですか?!
でも、じゃあ、なんで彼らがジュダルの従者なんですか? 」
国の財政にまで関わる組織が、『マギ』の従者だなんてますますわからない。
「ジュダルは、幼少期からあの『銀行屋』とよばれる従者たちに育てられたのだ。あの者どもは、ジュダルの育て親ということだ。
俺も詳しくは知らないが、ジュダルはこの国にやってくる前に、『マギ』をあがめる従者共に拾われて、赤子の頃から育てられたらしい」
「え……、ジュダルってはじめから、この宮廷にいたんじゃないんですか? 」
意外なことに、ハイリアは驚いた。
宮廷を我がもの顔で歩いているから、てっきりここで生まれたのだとばかり思っていた。
「あいつが『マギ』としてこの国に連れてこられたのは、幼い子どもの頃のことだ。
宮廷に従者たる者どもが住まうようになったのも、ジュダルが奴らに連れられて煌帝国へやってきてからだな」
「そうだったんですね……」
ジュダルが彼らを『親父ども』と呼ぶ理由がようやくわかった。
知らなかった事が明るみになって、頭の中の疑問が少し整理されたかんじだ。