第19章 緋色の夢 〔Ⅳ〕
「ねぇ、ジュダル! 」
「ああ? 」
呼び止めて振り返ったジュダルの機嫌はわりといい。
今まで聞けずにいた疑問が頭に浮かんでいて、ハイリアは迷いながら言った。
「ジュダルって、いつもあの……従者の人達と、どんなことしてるの? 神事とか、やってるんでしょ? 」
ジュダルは一瞬、面倒くさそうな表情を浮かべたが、苛立つ様子はみせなかった。
「……どんなっていわれても困るけどよぉ。まー、『マギ』の神事ってやつをやるんだよ。ほら、よく日照りが続いて雨が降るように祈ったりする地域があるだろ?
あんな感じでルフに祈るんだよ。家内安全、健康祈願、心願成就ってな」
意外にも答えてくれた内容は、ひどくあっさりとしていた。
「え……、そんなもんなの? 『マギ』の神事って……」
「そうだよ、長いだけでつまんねぇーし、親父どもだって何するわけじゃねーんだ。ただ周りで見ているだけだからな」
「そうだったんだ……」
なんだか初めてジュダルが仕事っぽいことしている絵が浮かんだ。
「ねぇ、それ私も見に行っちゃ……」
「ダメだ! 」
全て言い切る前に、ジュダルが言った。
なんだか随分きっぱりと断られて、少し拒絶されたような気分になった。
「一応、儀式なんだよ。『マギ』とそこに仕える魔導士しか入れねーんだ。おまえには無理だ。だいたい、おまえにそんなめんどくせー姿見られてたまるかよ! 」
確かに自分は魔導士ではない。
そんな制限があったのかと思いながら、ジュダルが神官として神頼みなんてしている姿を想像すると、ちょっと可笑しかった。