第19章 緋色の夢 〔Ⅳ〕
「やっと言えたな。今日はこの辺りでやめといてやるよ」
にんまりと浮かべられた悪戯な笑みに、なんだか悔しくなる。
「何それ、くすぐるだけじゃ終わらないってこと? 」
ぼんやりとする頭で言うと、ジュダルは呆れた顔してため息をついた。
「おまえ本当にバカなのか? 俺はこのまま続きしたっていいんだぜー? 」
「それはやだ!! 」
真っ赤な顔して声を張り上げたハイリアをみて、ジュダルは吹き出した。
「なんで笑うのよ!? 」
これ以上、同じ事を繰り返されなんてしたら、おかしくなりそうだ。
「いや、ほんとに、もう少しでいいから成長してくれよな! 」
何がそんなに面白いのか、大笑いしているジュダルにムッとしながらハイリアは、いつまでも腕を絡めて上に乗っている彼の体をぐいぐいと押しやった。
「もー、なんなの……? こういうの、もうやめてよね! 八つ当たりされる方がましだったわよ」
「俺は毎回これでもいいけどなー」
にやりと笑みを浮かべたジュダルをみて、顔が火照った。
「馬鹿なこと言ってないで、さっさと行きなさいよ! また従者の人が呼びにくるわよ! 」
「そうだったな。仕方ねーから行ってやるか」
立ち上がったジュダルは、面倒くさそうに言って背伸びをした。
「なんか、どうでもいいみたいな感じね……」
「おまえと遊んでた方が、よっぽどおもしれーからな! 」
視線を合わせて笑顔を浮かべられたから、なんだか戸惑った。
まだ体が熱いせいかもしれない。恥ずかしいような気持ちになっていた。
「じゃあ、行ってくるからよぉ。おまえは桃でも食って待ってろよ」
そう言って、ジュダルは宮廷の方へとすたすたと歩き始めた。
先程の従者と会うのだろうと思ったら、少し嫌な気分になった。