第18章 緋色の夢 〔Ⅲ〕
太陽が真上に登った頃、宮廷内にはトンカン、トンカンと釘を打つ音があちこちから響き渡っていた。
どこも壊れた屋根の修復作業中である。
ハイリアとジュダルは、その中でも最も恐ろしい場所の屋根に登り、修復作業を行っていた。
紅炎の書庫の真上に空いてしまった大穴を塞ぐために、木の板を端から当てて釘を打ち込みながら、ハイリアは大きなあくびをした。
こうなった経緯を思い出すと、ため息しかでないはずなのに、ぽかぽかと日差しが暖かいせいで眠くなってきてしまった。
びしょぬれになった服は、今は着替えたおかげで寒くはない。
結局また慣れない格好に着飾られてしまって、落ち着かなくはあるのだけれど、さっきの服よりは軽装なので楽だった。
あんなに服を濡らしたせいで紅玉にはかなり怒られたのだが、動きにくいなら軽快な服装にしてあげると言われ、彼女が変わりに衣装ケースから取り出してきたのは、紫の長いワンピース型の衣装だったのだ。
煌の民族衣装でもある、深いスリットの入った華やかなノースリーブの衣装は、着れば体のラインが強調されてしまう服で、絶対に嫌だとは言ったのだけれど、「今日、ハイリアちゃんは断ることができないはずよぉ! 」と紅玉に言いくるめられて結局、着させられた。
ズボンをはくことを紅玉に許してもらえなかったせいで、膝立ちしていると片足はスリットからほとんど出てしまう。
露出の激しさだけが非常に落ち着かないのだが、動きやすくはあって、作業に集中していればほとんど気にならなかった。
「なぁ、やっぱ魔法でやった方が早くねーか? 」
紅炎に言われたせいか、意外と真面目に板に釘を打ち込んでいたジュダルが面倒くさそうに言った。
「ダメよ。ジュダル魔法でやると雑なんだから! 上手くできてるんだからそのまま続けて」
いつもなんでも魔法で軽々とすまそうとするわりには、意外と手先が器用なようで、彼が打ち込んだ釘は曲がったりせず綺麗に板に収まっている。
「でもよぉ……、こんなんやってたら昼飯ぜんぜん食えねーじゃん。いつになったら終わんだよ……。いいかげん腹が減ったぜぇ……」
きゅるきゅるとお腹を鳴らしながら、ジュダルは金槌を置いて屋根の上に寝ころんでしまった。
まだ半分ほどしか修復できていないというのに、もう集中力が切れたらしい。