第18章 緋色の夢 〔Ⅲ〕
「ジュダルく~ん、ハイリアちゃ~ん! いちゃついてるところ悪いんだけどぉ~、後ろの炎兄の相手もよろしくねぇ~! 」
紅覇の声が響きわたり、ジュダルと共に後ろを振り返り見ると、いつの間にか全身魔装に身を包んだ紅炎が、憤怒の形相で空に浮かんで立っていた。
殺気を感じて凍り付く。
「ごめんねぇ~! 怒ってるみたいで、僕じゃ止められなかったしぃ~! 」
紅覇の声を聞きながら、ハイリアとジュダルは青ざめて固まった。
「ジュダル、ハイリア……。この惨状はいったいどういうことだ? 」
苛立つ低い紅炎の声を聞きながら辺りを見渡せば、宮廷の屋根瓦はあちこち穴だらけになっていた。
全部、自分がさっき避けたジュダルの光弾があけてしまったものだろう。
そして、恐ろしいことにその光弾の一つが、紅炎の書庫がある屋根瓦にまでぶつかり当たったらしく、書庫の真上に大穴があいていることにハイリアは気がついた。
「いや……、これはよぉ、ちょっとした事故っつーか……」
「すみません、紅炎様……、私……止められなくて……」
あたふたとし始めた神官とその側近を、紅炎は鋭い眼光で睨み付けた。
「すぐに元に戻せ。今、すぐにだ!! 」
大きく響き渡った紅炎の声に、ジュダルとハイリアはすぐさま承知の返事をした。