第18章 緋色の夢 〔Ⅲ〕
「うわっ! おまえびしょ濡れだな! 」
腕に抱え込んだハイリアの濡れた服が気持ち悪かったようで、ジュダルは顔をしかめていた。
「誰の、せいよ!! 」
涙目になって咳込みながら、ハイリアは苛立って声を張り上げた。
冷たい水に浸かったせいで酷く寒いし、服が重たい。
その上、不本意ながらジュダルに軽々と抱えられている状況が気に入らなかった。
「なんだよ、おまえ震えてんのかよ? 水が苦手とは聞いたけどよぉ、まさかほんとに泳げねーのか? 」
「うるさい! あんな冷たい水に入れられて寒かっただけよ! 」
寒いのも確かなのだけれど、溺れかけたのがばれたようで恥ずかしかった。
顔を真っ赤にして怒るハイリアを見て、ジュダルはにんまりと笑っていた。
「なら、俺が暖めてやろうかー? 」
悪戯な笑みを浮かべて、わざわざ顔を近づけてきたからドキリとした。
慌てて迫ってきたジュダルの顔を両手で押し戻した。
「バカなこと言わないで! 早く降ろして! 」
「いいのか? ここ、それなりに高さあるぜー? 」
下を見ると、確かに宮廷の近くとはいえ屋根よりも高かった。
にやつくジュダルを見ていると腹立たしかったけれど、仕方なしにハイリアは言った。
「下で……、お願いします……」
「そうかよ、めんどくせぇ奴だな」
ジュダルが満足そうに笑みを浮かべながらゆっくりと下降し始めた時、宮廷の廊下から誰かがこちらに向かって手を振っていることに気がついた。
にこにこと笑みを浮かべながら手を振っているのは練 紅覇だった。