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【マギ*】 暁の月桂

第18章 緋色の夢 〔Ⅲ〕


「いつまでも逃げ回ってんじゃねーぞ、ハイリア! 」

苛立つ神官の声と、ドタドタと走り回る音が宮廷内に慌ただしく響いていた。

廊下を歩く官吏の間をすり抜けるように走りながら、ハイリアはジュダルに追いつかれないように必死だった。

足下の裾を持ち上げているおかげで、足に衣装が絡まらずになんとか走れているが、着慣れない服が重いせいで疲れてもきていた。

こちらは足で、向こうは宙に浮いた状態だ。

馬鹿みたいに魔力をもつジュダルと、追いかけっこで体力の根気比べなんてしたら、先に疲れてまいってしまうのはこちらの方だ。

―― このままじゃ、いずれ追いつかれる!

浮いた状態で変わらず追いかけてきているジュダルを振り返りみていた時、袖もとが風ではためいて、銀の腕輪が見えた。

―― そうだ! コレがあったじゃない!

ハイリアは良い方法を見つけて、にやりと笑みを浮かべた。

「恩恵と破壊を司る精霊よ。我が身に宿れ、アイム! 」

銀の金属器に呼びかけて、ハイリアはその身に青い焔を灯し、姿を変えた。

髪は獅子のようなたて髪となって伸び、その頭の左右は鋭くとがって、髪が獣の耳のような造形となった。後ろに長く伸びた白髪は足下まで広がりを見せて、その毛先には黒い縞模様が絡みつく。

額には金色のジンの目が闇から覗くように現れ、胸元から背中にかけて白色の体毛が生えて肌を覆い尽くした。

腕から先は獣のようになり、鋭い爪を有する手元には、三日月形の銀の双剣が握られる。

胸の中心には青い蛇の目とも、猫の目とも見える宝玉の首飾りが掛けられ、それを囲むように肩や首周りは、じゃらじゃらとした銀の装飾品で飾られた。

腰に巻かれた深いスリットが入った紫の長い布からは、鎧のような濃紺の鱗に覆われた足が、付け根から先まで大きく露出する。

つややかな青い光沢をはなつその足で踏み込むと、ハイリアは宙へと浮かび上がった。

手元の双剣が少し邪魔だったけれど、これならしばらく息が切れる心配がないし、逃げる速度に勢いをつけることができる。
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