第18章 緋色の夢 〔Ⅲ〕
「ちぇ~っ、つまんないのぉ~! じゃあ、やっぱりジュダルくんに追いかけられちゃえ~! お~い! ジュダルく~ん!! 」
声を張り上げて手を振った紅覇をみて、ハイリアは表情を引きつらせた。
後ろを見れば、先程まっすぐ駆けていた通路を、タイミング良くジュダルが通り過ぎようとしているところだった。
紅覇の声に気づいたジュダルが、面倒くさそうにこちらを見ていた。
「んだよ! うるせぇーなー! 」
「ジュダルく~ん、この子誰だかわかるぅ~? 」
「紅覇様! 」
腕を掴んで放さない紅覇の手を、どうにか外そうとハイリアはもがいた。
足を止め、目を細めてこちらを見ている神官の姿に焦る。
「ああ? 誰だよ、その……」
そこまで言って、ジュダルの瞳に悪戯な光が宿ったのがわかった。
―― やばい、ばれた!!
「おい、紅覇。そいつを放すなよ? 」
ジュダルの口元がつり上がったのが見えて、ハイリアは急いで力を解放した。
腕に集中させたマゴイで紅覇の手を弾くと、慌てて駆けだした。
「痛ったぁ~……。ひどいなぁ~、ハイリアちゃん」
「バカ! なんで放しやがった! 待ちやがれシロ!! 」
宮廷の廊下を勢いよく左に走り抜けていった女官姿のハイリアと、それを楽しそうに追いかけていった神官をみて、紅覇は面白そうに笑みを浮かべていた。
「ほんと仲良しだよねぇ~、二人とも! 」