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【マギ*】 暁の月桂

第18章 緋色の夢 〔Ⅲ〕


「い、いただきます」

小さな声でハイリアは言って、熱々のあん饅を気をつけて手に取った。そして、思い切って一口かぶりついた。

ふわりとした食感のあとに、もちもちとした少し弾力のある生地の甘さが広がったけれど、さすがに一口では餡まではまだ届かなくて、もう一口かぶりついた。

とたんに熱々の餡がとろりと溢れ出し、舌先を刺激した。

一瞬、ぴりりとした火傷にも似た痛みが走ったけれど、舌で転がすうちに熱さは和らいで、まろやかな餡の甘みが口の中に広がった。

あずきの粒の食感が残る餡は舌触りが良くて甘すぎず、いくらでも食べられそうなほど、すっきりとした後味だった。

「美味しい……! 」

お店で食べるような味に驚きながら、ハイリアは呟いた。

温かな餡は、心までほんわかと温かくなるような優しい味わいで、自然と硬くなっていた表情が和らいでいった。

「すごい、美味しいです! 白龍皇子!! 」

声を張り上げてしまったせいか、白龍が驚いた様子で振り返り見た。

笑顔を浮かべているハイリアを見たとたん、白龍は困った様子で視線を泳がせて、慌ててかまどの方へと向き直した。

「あ、ありがとうございます! 」

背中を見せて言われた声は、いつものなげやりな冷たい答えとは違って聞こえたから、ハイリアは少し嬉しくなった。

「お待たせ、時間がかかってごめんなさいね。どう? 白龍の料理は美味しいでしょう? 」

お茶を入れてきてくれた白瑛が、御盆に湯飲み茶碗をのせて炊事場へ戻ってきた。

「はい、とっても美味しいです。白龍様がこんなに料理上手だなんて知らなかったです! 」

「気に入ってもらえたならよかったわ! 私も上手く作れればいいのだけれど、いつも白龍ほど上手くはいかなくて……。はい、お茶も一緒にどうぞ! 」

にっこりと微笑みながら、白瑛は温かなお茶の入った湯飲みをハイリアの前へ置いた。

「ありがとうございます! 」

食べかけのあん饅を置いて、湯飲みに手をかけたハイリアの視線先に、白瑛の後ろに立つ青舜の姿が目に入った。
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