第18章 緋色の夢 〔Ⅲ〕
「すみません、白瑛様! お見苦しいところをお見せしてしまって! 」
慌てて膝をついて敬礼したが、恥ずかしくて顔から火が出そうだった。
「そんなことはありませんよ。あなたがそんな格好をしているなんて可愛らしいわね」
白瑛はくすくすと笑っていた。
「紅玉様との賭けに負けたそうですよ。今日はこの格好で過ごすそうです」
「青舜さん!! 」
「いいじゃないですか、本当のことですし、似合っているんですから」
朗らかに笑顔を浮かべる青舜を内心恨みながら、ハイリアは心を落ち着かせるように自分に言い聞かせて、袖もとから預かっていた書簡を取り出した。
「白瑛様、こちらが紅炎様からお預かりしていた書簡です」
茶色い帯の巻物を差し出すと、白瑛は受け取った。
「ありがとう。紅炎殿も悪い人ですね。急ぎでもなかったのに、あなたにこの書簡を持たせたのでしょう? 」
「はい、おっしゃる通りです。よくおわかりになりましたね……」
「あの方はそういう人ですから。きっとあなたが可愛らしいから、少し悪戯したくなったのでしょう」
くすりと笑って白瑛は言った。
「そうだわ、ハイリア殿。ちょうど白龍が作ってくれた、あん饅ができたところなの。よかったら食べていかない? 」
「え……、いいのですか? 」
ハイリアは言いながら、かまどで湯気を出している蒸籠の側に立つ、白龍の様子をちらりと伺った。
表情を硬くしている皇子は、ハイリアと目が合うなり、視線を逸らした。
「ねぇ、いいわよね? 白龍」
「姉上が良いのであれば、いいのではないですか? 」
白龍はそう言って、すぐにかまどの方へと視線を向けた。