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【マギ*】 暁の月桂

第18章 緋色の夢 〔Ⅲ〕


「……そうだな。少し聞いてみただけだ。気にするな」

ハイリアの反応をみて、紅炎は小さく息をついた。

「……神官殿も大変ですね……」

紅明は口元を扇子で隠しながらぽつりと呟いたが、その声はハイリアには聞こえなかったようだった。

「あの……、そんなことより紅炎様、紅明様。手伝って欲しいこととは何ですか? お二人が揃っているって事は、同じ内容なのでしょうか? 」

戸惑いながら本題を切り出したハイリアに、紅炎と紅明は顔を見合わせて頷いた。そして、丸まっていた大きな地図を机の上に広げ始めた。

「そうだ。少しお前の知識を借りたいと思ってな」

紅炎が言った。

「ハイリア殿は、西方と東方を行き来していたキャラバンで生活されていたのですよね? 確か、武具も扱っていらしたとか? 」

「ええ、そうですけれど……」

「黄牙一族らが暮らすという、西方の極東平原を知っているな? おまえが知る経路と、物資を調達できる場を教えろ」

紅炎と紅明の鋭い眼差しがハイリアをとらえ、威圧を感じて思わず目を逸らした。

「……いくさを起こす、おつもりなのですか? 」

西の地が荒れるのだと思うと、複雑な気持ちになった。

「我らは世界統一を目指している。おまえも煌の武官となったのだ。それほど時を待たずして、戦場に立つことになろう。無駄な血を流さぬためにも、おまえの知識が欲しいのだ」

紅炎の言葉を聞きながら、ハイリアは机に広がった地図を静かに見つめた。

地図の見方も、村や街の位置も、キャラバンの駐在所も、その物資の調達の場所も、全てスミスから教わった。

この知識がこんな形で利用されるのかと思うと、拒絶したいような気持ちにもなった。

しかし、わかっていた。煌の武官となった以上、手を汚さないことなんて出来ないだろうと思っていた。

ついにその時がきたかと思いながら、ハイリアは息をついた。

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