• テキストサイズ

【マギ*】 暁の月桂

第18章 緋色の夢 〔Ⅲ〕


運が良かったことに、廊下に人通りは少なかった。ジュダルもまだ帰ってきている様子がない。

中庭に通じる廊下をそそくさと足早に通り過ぎると、すれ違った三人の官吏が振り返っていったのが見えた。恥ずかしくて顔が熱くなった。

困ったことに、今日も何かと手伝いを頼まれているのだ。その始めの人が、書庫によくいるということだけが、せめてもの救いだった。

「紅炎様! ハイリアです! 」

書庫の扉を叩きながら言うと、すぐに「入れ」と声は返ってきた。

いつもはすぐに中に入れるというのに、こんな格好をしているせいで変に緊張してしまった。

深呼吸をしてから扉を開けると、すばやく中に入って扉を閉めた。

廊下にいる時よりは視線が減ったことに、少しほっとしながら振り返ると、紅炎がいつも仕事をしている机の脇に、もう一人、姿を見つけてハイリアは固まった。

練 紅明だった。二人とも驚いた様子で、こちらを凝視している。

「ハイリア……? 」

「ハイリア殿……、ですよね? 」

あんまりじっと見られて、ハイリアはみるみる顔を赤くに染めていった。

「お願いですから、あんまり見ないでください! 」

恥ずかしげにうつむきながら、ハイリアは落ち着かない様子で紅炎と紅明が待つ、書庫の奥へと足を進めた。

二人が待つ机の側に到着しても、二人ともこちらをじっと見てくるだけで、何にも言わない。

「なんですか!? そんなに変ですか? 」

「いや、見違えたと思ってな」

「似合っていますよ、ハイリア殿」

あまり表情を変えない紅炎と、穏やかな笑顔を浮かべた紅明に、どんな反応をしていいかわからなくて、ハイリアは熱をもった頬に恥ずかしそうに手を当てた。

手は決して冷たい方ではないのに、ひんやりと感じた。
/ 677ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp