第17章 緋色の夢 〔Ⅱ〕
「……紅玉から聞いたんだよ。おまえ、そろそろ誕生日なんだろ? 」
ぽつりとジュダルに言われ、驚いた。
宮廷で何かと気にかけてくれている紅玉に、誕生日がもうすぐなのだと話した覚えはあった。
でも、だからといって、ジュダルが彼女から聞いて、それでわざわざプレゼントを用意してくれたということなのだろうか。しかも、あんな綺麗な髪飾りを。
とても嬉しいのだけれど、まさかジュダルから贈り物がくるなんて思ってもみなかったから、なんだか恥ずかしいような、落ち着かない気持ちで、鼓動が早くなっていった。
「勘違いするんじゃねーぞ? おまえは一応、俺の部下なわけだし……、おまえにはもったいねぇ物かもしんねーけど……、武官の昇級祝いとか、そういうの全部含めてなんだからな! 」
顔を赤くして戸惑うハイリアに、ジュダルは慌てて付け足すように言った。
彼の表情は見えないけれど、偉そうに言ってみせる口調も、心なしか優しさを含んでいるように感じるから不思議だった。
頬はすっかり熱く火照って、胸の中までが熱を持って騒がしかった。
少し落ち着きのない様子で、髪を束ねていたジュダルの手が止まり、後ろでカチリと音がした。
「これで、おまえのもんだ。かなり奮発してやったんだから、大事にしろよな! 」
髪飾りをつけ終わるなり、顔を赤く染めているハイリアの前に、ジュダルはあぐらをかいて座り込んだ。
なんだかまともに顔が見れなくなって、ハイリアは慌てて目線を下に向けた。
気恥ずかしくて、下を向いたというのに、ジュダルは顔をのぞき込んでくるから、困ってしまった。
「なんだよ? おまえ、嬉しくねーのかよ? 」
何も言わないハイリアに、ジュダルは顔をしかめていた。
ハイリアは慌てて、首を横に振った。
「違う、違うの! すごく嬉しいの! でも私、こういうの初めてで、なんて反応していいのかよくわかんなくって……」
こんな素敵な誕生日プレゼントをもらったのは、初めてなのだ。
家族以外の人から、ちゃんとしたプレゼントをもらったのも、祝ってもらったのも初めてだ。
だいたい、今回の誕生日なんて、あってないようなものだろうと思っていたから、まさか祝ってもらえるなんて思ってなくて、本当に驚いたのだ。
心の中が温かくなって、嬉しくて、どうしていいのかわからなかった。
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