第17章 緋色の夢 〔Ⅱ〕
「わかったわよ……、じゃあ明日は、朝行くからちゃんと起きていてよねぇ」
ハイリアがため息混じりに言うと、ジュダルはにんまりと満足そうに笑みを浮かべていた。
「忘れんじゃねーぞ? それでよぉ、ハイリア。おまえそのまま、そこで少しじっとしてろよ! 」
「……なんで? 」
「いいからじっとしてろよ? いいって言うまで絶ってぇ動くんじゃねーぞ! 」
注意深く言ってから立ち上がったジュダルを不思議に思いながら、ハイリアがその場で大人しくしていると、ジュダルは自分の背中側に回って座り込み、なぜか髪に触れてきた。
「え? ちょっと何してんの?! 」
思わず振り返ったハイリアの目に、ジュダルが手にもつ銀色のものが見えた。
何やら綺麗な細工が成された筒状の装飾品は、髪留めのようだった。
「バカ、見てんじゃねーよ! おまえはそっち向いてろ! 」
ジュダルが慌ててその髪飾りを隠しながら、ハイリアの頭を掴んで力任せに首の向きを前へと戻させた。
前に向きを直されたハイリアは、見えてしまったものに動揺していた。
―― え? どういうこと!? なんであんなものジュダルが持ってるの!?
再び、後ろ髪をまとめるように触れてきたジュダルに戸惑いながら、ハイリアは顔を真っ赤に染め上げた。
さっき見えたのは明らかに女性用の髪留めだった。
しかも、ジュダルがそれを持っていて、自分の髪をまとめ上げているということが、どういうことを示すのかは、さすがに自分でもわかった。
「な、なんで……。まさか、それをさっき買ってきたの!? 」
突然のジュダルからの贈り物に、ハイリアは戸惑いながら聞いた。
後ろからの返答はすぐにはなく、ジュダルは後ろ髪を指でといてまとめながら、しばらく黙っていた。