• テキストサイズ

【マギ*】 暁の月桂

第17章 緋色の夢 〔Ⅱ〕


「ふざけてんじゃねーぞ、じじい! おまえ、何者だ!? 」

ジュダルは杖先を、爺さんの喉もとに押し当てた。

「ワシはしがない商人じゃよ。いきり立つな若造。そんなにその娘を奪われたくなければ、手がないわけではないぞい? この店にあるものを買うんじゃよ。それで道は決められるじゃろう」

「てめぇ、俺を怒らせておいて、この店のもんまで売りつけようってのか? 」

「話を聞かんやつじゃのう……。お前さんはもう、誰かさんから聞いたはずじゃよ? お前さんが気にしている白いおなごは、もうじき誕生日なのじゃろう? 贈り物をしてやれと言っておるのじゃ」

老人の白い眉の中に埋もれた青い瞳が、まっすぐとジュダルを見つめた。

昼間、紅玉に全く同じ事を言われたことを思い出し、ジュダルは動揺した。

―― ほんとに、なんなんだ、このじじいは!?

「まあ、焦るな黒き子よ。騙されたと思ってその中から選んでみなさい。必ず、お前さんの助けになるものが見つかるはずじゃよ」

貴金属が並ぶ露店を指さす老人をみて、ジュダルは戸惑いながらも、その喉笛から杖を離した。

「変なもん売りつけやがったら、ただじゃおかねーからな! 」

苛立ちながらも露店へ足を向けたジュダルを見て、老人は歯を見せて笑った。

「変なもんなんぞ、そこにはないわい。勝手にお前さんが選ぶのじゃ」

ジュダルが側を離れるなり、爺さんは再び椅子をギコギコと音をたてて揺らし始めた。

不愉快な音に顔をしかめながら、ジュダルは露店に並ぶ貴金属に目を向けた。

どれもこれもガラクタのようにしか見えない。

奥に並ぶ怪しげな像だの、鏡だの、はたまた天井にぶらさがっている妙なお面だの、どこから拾ってきたかわからないようなものばかりだ。

この中から贈り物を選べという、怪しげな老人の言葉を鵜呑みにするなんて、馬鹿げた話だとは思ったが、ことごとく話してもいないことを当てられただけに、このまま引き下がるのもしゃくだった。

―― そこまで言うなら、ためしてやろうじゃねーか!

勝手に選ぶというのならば、選ばせてみせろと思いながら、ジュダルは店の中を見渡した。
/ 677ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp