第5章 いなくなったモルジアナ
キャラバンの仲間が心配してざわつく中、キャラバン長が言った。
「皆、落ち着きなさい。モルジアナは助けよう。ただし、しっかりと準備を行ってからだ。傭兵を雇い、他のキャラバンにも呼びかけてもっと人数を増やす」
「そんな! それじゃあ、間に合わないかも知れないじゃないですか! 」
思わず声を上げたハイリアに、キャラバン長が言った。
「ハイリア、焦るのはわかるが、あの盗賊団には他のキャラバンも襲われているのだよ。この際、モルジアナだけでなく、他の人を助ける方法も考えるべきだ。 大丈夫だ。皆で協力すれば、必ず助かるはずだ」
落ち着かせるように、穏やかな口調そう言ったキャラバン長は、男達を呼び集め、長の部屋へとこもってしまった。
きっと、救出について話し合っているに違いない。
話の内容を聞き、救出に参加するために、ライラ、サアサと共に、キャラバン長の部屋へとハイリアも向かったが、部屋の前にいた見張りに早々に追い返されてしまった。
救出は危険を伴うから、男衆のみで行う予定なのだという。
納得のいかないライラが怒鳴り込んだが、話は聞くから、とりあえず今日のところは眠るように言いくるめられてしまった。
結局、ハイリアたちは寝室に逆戻りだった。何も出来ないもどかしさが残る。
「明日、絶対にもう一度、キャラバン長に話をして、私たちも作戦にいれてもらおう! 」
ライラ、サアサと共に約束をして、ハイリアも眠りにつくため、目を閉じた。
深夜、皆が寝静まった頃、ハイリアは目を覚ました。
ずっと眠れなかった。だから、目を閉じて考えていた。盗賊団へ向かったモルジアナを助ける方法を。
何度考えても、傭兵をこれから集めて助けに向かうのでは、遅い気がした。
たった一人で向かったのだ。何かあってからでは、取り返しがつかないと思う。
ライラ達から聞いた。モルジアナは『ファナリス』という一族の者だろうと。
彼らは、戦闘民族とも言われ、とても身体能力に長けた一族らしい。
けれど、それ故に奴隷商人に狙われていて、奴隷狩りにあうことも多いのだという。
昼間に見た、奴隷の人達の姿が何度も浮かんで消えなかった。
ファナリスは強いらしいけれど、不死身なわけじゃない。
もしも、モルジアナが酷い目にあったらと思うと、不安でたまらなくなった。