第5章 いなくなったモルジアナ
「でも、他にルートがあるなら……。それより、モルジアナは? あの子だってバルバッドに行けなくて困っているはずだけど、モルジアナはどこへ行くつもりだったか知ってる? 」
「いや……行き先までは知らないんだよなぁ。サアサ知ってる? 」
「私も聞いたことがないの……」
「じゃあ、モルジアナに早く聞かないと……。何か方法がわかるかもしれないし……」
「だな! で、モルジアナはどこに行ったんだ? トイレにしては長すぎるだろ」
一緒に部屋を出たんだろう? とライラがきく。
「うん。私も声をかけようと思ったんだけど、キャラバン長の部屋から出たら、先に出たはずのモルジアナの姿が見えなくて……」
ハイリアの言葉に、ライラの表情が曇った。
「サアサ、ハイリア……、とりあえずキャラバン内を探してみよう」
ライラの呼びかけで、それぞれ分かれてキャラバンの仲間にモルジアナを知らないか尋ねた。
分担した部屋を訪れるが、誰もモルジアナを見ていない。
嫌な予感を覚えながら、集合場所とした、いつもの寝室に帰ってくると、ライラとサアサも首を横に振った。
モルジアナがキャラバンにいない。
そのことに気づいて、ハイリアが思い返して引っかかるのは、彼女がキャラバン長の部屋を出る前にみせた表情だった。
強い眼差しで外の方を見つめた彼女の表情は、いま思えば何かを決意していたようにも見えなくはない。
『もし……、誰かが盗賊団を倒せたら……、道は通れるようになりますよね? 』
キャラバン長に言った彼女の言葉を思い出して、ハイリアは青ざめた。
「大変だ!! ライラ、サアサ。モルジアナが盗賊のところに一人で行っちゃったかもしれない! 」
状況は、すぐにキャラバン長に知らされた。
もう一度、確認のためにキャラバン内を全員で捜索してみたけれど、やはりモルジアナの姿はどこにもなかった。
本当に行ってしまったのだ。たった一人で。どうしてあの時、気づけなかったのだろうかと後悔した。