第17章 緋色の夢 〔Ⅱ〕
鮮やかな花火が空に上が始め、街には時折、大きな音が響き渡っていた。
それを見上げることもせずに、ジュダルは人がたかる屋台の店を回って歩いていた。
側にハイリアはいない。広場で開かれている、祭りの出し物が見渡せる家屋の屋根の上に置いてきたのだ。
一人で楽しんでいる様子だった彼女を置いて、街の屋台に足を向けたのは、実はもう二回目になる。
本当はジュダルも今頃、屋根の上で花火やら、舞踊やらを楽しんでいる予定だったのだ。
その予定が狂ったのは、せっかく出店で買い込んだ食べ物を、片っ端からハイリアに分け与える羽目になったからだった。
結局、ほとんど食べられて、二度目の買い物になったのである。
「ったく、人のもんばっかり食べやがって……」
少し、少しと言いながら、手を伸ばして食べ尽くしていった姿を思い出して、ジュダルは腹が立っていた。
白くて細い外見のくせに、やたらと良く食べる。
女子は小食だとか言っていたバカは、いったいどこの誰だと思いながら、ジュダルが屋台を見渡して歩いていた。
人混みをかきわけて進み、ようやく先程食べたいと思っていた、若鶏の唐揚げを売る店を見つけた時、その露店の隣にあった妙な店に、彼の目は止まった。
食べ物の露店の間に挟まれて、貴金属を売る露店があったのだ。
露店の台座には、種類も様々な、きらびやかな貴金属が並んでいたが、別に綺麗というわけではない。
金や銀の金具から、棚や食器類、宝石のつく装飾品まで並んだその店は、貴金属が使われているものなら、全部寄せ集めましたといった様子で、物がいくつも積み重なってごちゃごちゃとしていた。
多量の貴金属が並ぶ異様な店には、当然客足なんてなく、店の前でゆりかごみたいな椅子に座り込んでいる老いぼれ爺さんが、ゆらゆらと椅子を揺らしているだけだった。
茶色い椅子は、ギコギコと木が軋む音を響かせている。
―― こんな店、さっきあったか?
見覚えのない露店に興味を引かれ、ジュダルはその店の前に足を踏み入れた。