第17章 緋色の夢 〔Ⅱ〕
まさか、おサボり大魔王から、こんな言葉が飛び出すなんて思わなかった。
ハイリアが笑い声を上げると、笑われたことが不本意だったらしいジュダルは眉を寄せていた。
「……おい、何がそんなにおかしいんだよ? 」
「ごめん、ごめん! でも……、あっははは!! ジュダルが、そんなこと言うなんて! 」
可笑しくてお腹が痛かった。
「んだよ! 少し心配してやれば! もう言ってやんねぇー! 」
笑い続けるハイリアに、ジュダルは不満そうな表情を浮かべて、露店の並ぶ街の奥へと、一人ずんずんと歩調を早めた。
置いて行かれそうになって、ハイリアは慌てて彼を追いかける。
「ちょっと、ごめん! 待ってよ、ジュダル! 」
「知るかよ! 」
「笑って悪かったってば! 」
ジュダルは、本当に笑われたことに相当拗ねてるらしく、屋台に並ぶ人混みをすりぬけて、どんどんと奥へ行ってしまう。
普段、自分に嫌がらせをする時は、何とも思っていない癖に、人にされるとすぐこれだ。全く、本当に自分勝手で、困った人だ。
見失ってしまいそうなジュダルの手を、腕を伸ばして掴むと、ハイリアはぐいっと体重をのせて引っぱった。
伸びた腕で体が揺れて、後ろにひっくり返りそうになった彼は目を丸くしていた。
「危っねぇーな! 何しやがる!? 」
「だって、はぐれちゃうでしょ? 」
しかめっ面のジュダルに向かって、ハイリアがにっこりと笑ってみせた。