第5章 いなくなったモルジアナ
「でも、もし……」
ぽつりとモルジアナが話し出す。
「もし……、誰かがその盗賊団を倒せたら……、道は通れるようになりますよね? 」
モルジアナの意外な発言に、ハイリアは目を丸くした。モルジアナはまっすぐに、キャラバン長を見つめている。
「ああ、誰かが倒せたらなぁ、でも無理な話だよ。あきらめてくれ」
キャラバン長の言葉に、モルジアナは目を伏せた。
そして、何かを考え込むように一点を見つめたあと、強い眼差しを外に向けて、部屋を出て行った。
ハイリアもキャラバン長に、少し考える時間がほしいことを伝え、部屋の外に出た。
きっと同じように困っているモルジアナに声をかけようと思ったのに、もうそこにモルジアナの姿はなかった。
先に部屋に戻ったのだろうか。
ライラとサアサのいる部屋に、ハイリアが入ると、そこにモルジアナはいなかった。
「あれ? モルジアナは? 」
「一緒じゃないのか? じゃあきっと、トイレだよ、トイレ! 」
ライラがけらけらと笑いながら言った。確かにそうかもしれない。
「で、なんだったんだよ。キャラバン長からの話って! 」
ライラがわくわくしながら聞いてきて、なんだか言いだしにくかったが、ハイリアは聞いたことをそのままライラとサアサに伝えた。
バルバッドに行けなくなったと聞いて、ライラとサアサは、自分のことのように心配してくれた。
「それは困ったな……、でもシンドリアに行くなら他にも方法がないわけじゃあない」
「そうね、シンドリアへなら。ただ、最短ルートがダメになっちゃったわね」
そう言われて、ハイリアはホッとした。
なんだか突然のことで頭が回らなかったけれど、二人に相談して良かったと思った。
最短ルートではなくなるけれど、この際、仕方がないと思うことにした。