第17章 緋色の夢 〔Ⅱ〕
「……宮廷内にある書簡庫の一つだ。少しは自分で捜してみろ」
紅炎はそう言って、手に取った書物を開き、再び視線を文面へと向け始めた。
これ以上、ヒントをくれるつもりはないらしい紅炎を見て、ジュダルはため息をついた。
書簡庫なんて、ほぼ通り過ぎるだけで、入ったことも数えるほどしか記憶になかったが、広い宮廷内に書籍や書簡を保管する部屋がどれほどあるかは、考えるだけでだいたいの予想がついた。
その中から、自分の部下を見つけ出さないといけないのかと思うと嫌気がさした。
もうハイリアを置いて、一人で祭りへ出掛けてしまおうかともジュダルは一瞬考えたが、紅炎にあそこまで言われて、このまま引き下がるのもしゃくだと感じていた。
「わかったよ……。捜せばいいんだろ? 」
―― こうなったら、ぜってぇー見つけ出してやる!
紅炎に渡された紙をくしゃりと握りしめ、とにかく早く見つけ出して、さっさと祭りに出掛けてしまおうと、ジュダルは薄暗い書庫から出て行った。