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【マギ*】 暁の月桂

第17章 緋色の夢 〔Ⅱ〕


「……わかった、わかった! 祝ってやるよ! 」

「本当!? ジュダルちゃん! 」

急に、態度を変えて笑顔を浮かべたジュダルを見て、紅玉は嬉しそうに微笑んだ。

「ああ、ほんと、ほんと。まー、俺も世話になってるわけだし、やってやるよ! 」

「よかったわぁ、嬉しいわジュダルちゃん! きっと、ハイリアちゃんも喜んでくれるわぁ! 」

喜ぶ紅玉を見ながら、ジュダルはすでに今日ある祭りを、どう楽しもうかだけ考えていた。

ハイリアを喜ばせるとか、祝うとか、そういうことはどうでもいいのである。

適当に、ハイリアを街に連れ出して、いつも通り祭りを楽しめればいいのだ。

食べ物の一つでも適当に食わせてやって、それで祝ったことにしておけば、紅玉から後で五月蠅く言われることもないのだから、実に楽な方法だった。

「じゃあ、俺はこれからハイリア捜すからよー! 」

「ありがとう、ジュダルちゃん! よろしくねぇ! 」

背中に紅玉の声を聞きながら、さっさと姿の見えない側近を見つけ出して、宮廷を抜け出してやろうと、ジュダルは宮廷の中へと急いだ。

剣を合わせる音や、かけ声を上げる武官の声で騒がしかった稽古場から立ち去り、宮廷の中に入り込むと、一気にその音は弱まり消えていった。

やたらと長い廊下をいくつか曲がり、中庭を抜けた先にある書庫へと向かう。

ようやくたどり着いた部屋の扉を乱暴に開けると、昼間だというのに広い書庫の中は薄暗かった。

積み重なった書物に埋まりながら、蝋燭の明かりを頼りに、机で書物を読む男の姿を中央に見つけて、ジュダルは歩み出した。

一瞬、目が合ったその男は、すぐに手にしている書物へと視線を戻していた。

「珍しいな、おまえがこんなところに来るとは……」

「まーな、捜しものだ。昼間だってのに、おまえは相変わらずぼんやりした顔してるんだな、紅炎。たまの休日に何してるかと思えば、また読書かよ……。全く似合わねーのにな……」

「おまえこそ似合わないだろう。わざわざ書物を探しに来たわけではないのだろう? 」

うっすらと笑みを浮かべながら紅炎は言った。

「ハイリアだよ、見てねーか? 」

「今日は来ていない。またどこかで力を貸しているのではないのか? 」

当たり前のように言った紅炎をみて、ジュダルは顔をしかめた。
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