第5章 いなくなったモルジアナ
片付けを済ませたキャラバンは、宿泊をしている砂漠の駐在地へと帰った。
オアシス都市に商売をするために、キャラバンが交替しながら使っている野営施設だ。
デリンマーのバザールの現状を、キャラバン長に報告しながら夕食会が行われた。
すると、別の町へ商売に行っていたキャラバン隊の報告から、この辺りのオアシス一帯が、人通りがなく商品がほとんど売れなかったことがわかった。
このままでは商品が売れないため、しばらくこの付近で商売を続ける予定だったが、早々に次の町へ向かう準備を整えるようだった。
次の町は、バルバッドだ。予定よりも早い到着となりそうで、複雑な気持ちになった。
明日、行くかもしれない街のため、部屋で荷造りをしていたハイリアの元に、キャラバンの副隊長から声がかかった。
「ハイリア、キャラバン長が呼んでいる。大事な話があるってさ」
滅多なことでは呼び出されないのに、何事だろうか。
「はい、わかりました」
不安を覚えながら、ハイリアが急いでキャラバン長の部屋へと向かうと、そこにはモルジアナの姿もあった。
なんとなく、嫌な予感を覚えながらキャラバン長の話を聞いた。
「すまないね。盗賊団が住み着いたとあっては、あの道は使えない。申し訳ないが、バルバッドへは行けなくなった」
キャラバン長の話を聞き終わり、ハイリアは愕然とした。嫌な予感が的中してしまった。
バルバッドの国境付近に、盗賊団が住み着いたため、その道を大幅に迂回することになったのだという。
キャラバンを危険に会わせることができないからという、キャラバン長の判断は正しい。
だけれど、せっかく目指してきたバルバッドに行けなくなるなんて、ショックで仕方がなかった。
「せっかく近くまでやってきたのに……」
悔しくて自然と拳に力が入っていた。
バルバッドに向かうことしか考えていなかっただけに、他の方法なんて急には思いつかなかった。
ぐるぐると不安ばかりが頭を駆けめぐって、考えが追いつかない。
ハイリアの隣に立つ、モルジアナも複雑そうな表情を浮かべて黙りこんでいた。
彼女もバルバッドに行きたがっていたのだから、当然だ。