第17章 緋色の夢 〔Ⅱ〕
「んなもん、見りゃわかんだよメガネ! 俺は、紅玉に聞いてんだ! おまえ、よくハイリアと話してんだろ? 」
「そんなこと言われたって、知らないわぁ……。今日は一回も、ハイリアちゃんと会っていないもの。いつもは必ずここに来るのに、今日は来てないのよぉ。
ジュダルちゃんこそ、心当たりないのぉ? いつも一緒にいるじゃない? 」
「知ってたら聞くわけねーだろ? 」
苛立つジュダルを見て、紅玉はため息を吐き、しばらく困った様子で考え込んでから、口を開いた。
「そうねぇ……、もしかしたら、紅炎お兄様の書庫にいるかもしれないわぁ。ハイリアちゃんが、時々、書庫の整理を手伝っているのを見かけるから……」
「紅炎? あいつが紅炎と一緒にいるところなんか、俺は見たことねーぞ! 」
「それは、神官殿がいない時だからでありますよ」
夏黄文の言葉に、ジュダルは目を丸くした。
「なんだよ、それ……」
「知らなかったのでありますか? ハイリア殿は、神官殿が留守にされている間や、眠っている間などに、宮廷を歩き回って仕事を手伝っているのですよ。
紅炎様でなくとも、どなたかの下へ出向いているのを、よく見かけます」
「ジュダルちゃん、知らなかったのねぇ……。ハイリアちゃん、夜はあまり眠れていないみたいなのよぉ? それでみんなの手伝いをしているみたいなの。
時々、寂しそうな顔をするし、心配だわぁ。ここに来てから、ずっと笑っていない気がするもの……」
二人の話を聞いて、ジュダルは気に入らない様子で、眉間にしわを寄せた。
―― あいつ……! 俺の側近のくせに、俺が知らないうちに他の野郎の所にまで、ふらふらと行ってやがったのか!?
「まあ、いいや。ありがとよ、紅玉! 」
「ああ! 待って、ジュダルちゃん!! 」
すぐに宮廷内の方へと体の向きを変えたジュダルを、紅玉は慌てて呼び止めた。
「ああ? なんだよ! 」
不本意に行動を止められたジュダルは、苛立ちながら振り返った。