第17章 緋色の夢 〔Ⅱ〕
晴れ渡った空の下を、ジュダルは実に不機嫌な顔をして歩いていた。
地面を踏みならす音も強く、眉間にはしわを寄せている。
周囲を見渡す赤い瞳にも、明らかな苛立ちが見て取れた。
「どこ行ったんだよ、あいつは! 」
朝から姿が見えない側近の姿を、彼は捜していた。
―― いつもはうざいほどに側にいて、サボるな、仕事はねーのかと五月蠅いくせに、今日は全く姿を見せやしねぇ! 上官の俺に、いい度胸じゃねーか!
部屋にもいなければ、どこに行くという、言づても、書き置きもなかったことに腹を立てていた。
煌の武官たちが腕を競う稽古場まで足を運んだというのに、刀を振るう武官達の中に真っ白な姿が見つからず、ジュダルはその身に宿る真っ黒な闇を彷彿とさせた。
変わりに別の赤い一点を見つけて、そこへ突き進む。
荒れた足音を響かせながら向かってくるジュダルを見て、男臭い武官たちの中、紅一点華やかな空気をかもしだしている練紅玉は、のびやかな声で言った。
「あら、ジュダルちゃんじゃない? 遊びにきたの~? 」
にこやかな笑顔を浮かべている彼女もまた、ジュダルが選んだ金属器使いだ。
第八皇女である彼女の側には、従者である夏黄文もいた。
武官として鍛錬をしていた紅玉が、魔装していた金属器をしまいきる前に、ジュダルは大きな声を上げていた。
「おい、ババア!! ハイリア知らねーかよ? 」
「ババア、じゃないっ! ジュダルちゃん、その呼び方やめてちょうだいよぉ! 」
広場に響き渡った声に、紅玉は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「ハイリア殿なら、ここには来ていませんよ、神官殿」
側にいる夏黄文が、紅玉を気づかいながら言った。