第16章 緋色の夢 〔Ⅰ〕
夢の中で不思議なものを見た。
宝物庫のような場所にいる、青く大きな巨人だ。
巨人の男は、獣が交じったような姿をしていた。
顔は人間だというのに、髪は獅子のようで、耳も猫のように上に立ち、目はまるで鋭い蛇の眼光だ。
体の腰から上は、獣のような体毛が生え、手に生えた爪も鋭く、腰から下は鱗の生えた体がとぐろを巻いていた。
人ならざる巨人は、腕を組んでたたずみ、自分に向かってゆっくりと言ったのだ。
『我が名はアイム。恩恵と破壊のジン。我が王に力を授けましょう』
両腕にはめている銀の腕輪が淡く光り、大事なお守りに新たな星の紋様が刻まれると、役目を終えたかのように、巨人は目の前から姿を消した。
命が消える前には、変な夢を見るみたいだ。
それにしても、なんだか少し寒い。さっきまで温かかったはずなのに。
ようやく黄泉の世界にでも着いたのだろうか。
ゆっくりと目を開けると、目の前に黒い影がぼんやりと浮かんだ。
「やっと起きたか。随分と寝てたな」
その影が、人だと声で気づく。
視界がはっきりとしてきて、それが黒い少年だとわかった。
よく見ると、洞穴で出会ったジュダルだった。
あぐらをかいて座る彼の赤い眼差しが、ハイリアを見下ろしていた。なぜ彼がここにいるのだろう。
不思議に思いながら横たわる体を起こすと、そこは空の上だった。
白い砂丘が広がる星空の下を、赤い絨毯がハイリアと、ジュダルをのせて飛んでいた。
「え!? ここどこ!? 」
驚いて立ち上がろうとしたハイリアの服を、ジュダルが掴んで座らせた。