第16章 緋色の夢 〔Ⅰ〕
ハイリアが村に入ってすぐに目にしたのは、村の惨状だった。
燃えさかる民家の入り口やその周辺には、亡くなった人の死骸がいくつも転がっていた。
辺りには、血生臭い死臭と焼けこげた匂いが漂っていて、動く人は誰も見当たらない。
滅びた故郷と同じ光景に、目を覆いたくなった。
地面に倒れた多くの人と、激しく燃え上がる民家を見て恐くなる。
―― みんないったいどこにいるの!?
ムトたちが心配だった。
辺りは炎と死体だけで、賊の姿も見当たらない。
熱風を肌に感じる中、みんなの姿を捜して走った。
いったいどうして、この村は襲われたんだろうか。
この辺りは、砂漠が近いし、そんなに豊かな土地でもない。だからこそ、キャラバンを受け入れることで、生活が成り立っているような場所だった。
賊に狙われるような理由が思いつかなかった。
村の人達は、キャラバンで訪れるたびに良くしてくれた。
みんないい人ばかりだった。どうして残虐な殺されかたをして、火まで放たれなければいけなかったのだ。
村の中心部へ近づくほど、建物は押し崩されていた。
崩れた宿や民家は、村の中心から外に向かって一定方向に倒れている。
散乱した瓦礫は、円をつくるように崩れた家に押し固まっていて、壁のように積み重なっていた。さっきの爆発の威力を物語っている。
なんで、みんなの姿が見えないのだ。
―― ムト! ジファール! 蘭花姉さん! カイト! 風真! スミスさん!
みんなの無事を祈りながら、必死で姿を捜していたその時、金属が勢いよくぶつかりあう音がした。
聞こえてくるのは、壁のようになった瓦礫の裏側からだった。
慌ててその場所に飛び出した瞬間、長剣を握りしめて戦うジファールの姿が目に入ってきた。