第15章 暗夜の再会
「何やってるんですか、早く逃げないと! 」
ウーゴを見つめ、動かないハイリアの手を、モルジアナが引いた。
その手を、なぜか振り払っていた。
戸惑うモルジアナに、ハイリアは言っていた。
「ごめん……モルジアナ。私、行けない! 」
それだけ告げて、ハイリアは彼女が止める声も聞かず、ジュダルめがけて走り出していた。
足に力を込めた瞬間、ジュダルに撃たれた腹部に痛みが走り、苛立ちを覚えた。
なんでこんなことをしているのだろうかと、自分で自分を不思議に思った。
ジュダルから逃げていたはずなのに、助けに走るなんて、誰が見ても理解できないし、馬鹿な行動だ。
この場を争いにしたのもジュダルだ。いけなかったのは彼だし、たくさんの人達を傷つけのもジュダルだ。
いつもそうだ。悪いことが起きる中心には、彼がいる。
しかも、周りを巻き込んで、騒ぎを起こすから、本当にたちが悪い。
ハイリアが彼の元に駆け寄った時、ジュダルは相変わらず意識もなく、ぶっ倒れていた。
ボロボロで、傷だらけで、見たこともない程、弱っている。
目の前で、今にも攻撃が迫ろうとしているのに、硬く目を閉じている表情は、傷さえなければ穏やかで、寝ているようにさえ見えるから、腹立たしかった。
とどめをさそうと、今も尚、巨大な熱魔法を作り出している目の前のウーゴをみて、ハイリアは急いで倒れるジュダルの体を持ち上げようと、腕を入れた。
細くみえるくせに、意外と体がでかくて困った。そして、全然軽くない。
体は鍛えていても、決して力持ちというわけではないのだ。それなのに、倒れている張本人から受けた傷のせいで、足に力が入りにくかった。
全く本当に、なんでこんな奴を助けなければ、いけないんだろうか。
自分に言い聞かせて、どうにか気合いで立ち上がった瞬間、赤い光が迫るのを感じて、ハイリアは目を見開いた。
いつの間にか、強大な熱魔法を宿したジンの手が、振り下ろされていた。
モルジアナやアラジン、アリババ、シンの叫ぶ声が聞こえたような気がした。