第15章 暗夜の再会
ジュダルは『マギ』であるアラジンを狙っている。
ならせめて、アラジンが彼から逃げる時間だけでも作りだしてやる。
漆黒の闇は、今もジュダルの周りに渦巻いていた。
あの闇を止める方法はわからない。けれど、一瞬、気を逸らすくらいはやってやろう。
ハイリアは手足にマゴイを溜めて身構えると、意識を集中させた。
「へぇ、本気かよ……。いいぜ、相手になってやる! 」
ジュダルが、歩み寄るハイリアに、不敵な笑みを浮かべ杖先を向けた時だった。
ハイリアの視界が一瞬で、『青』で覆われた。
何かと思ったときには、ジュダルの姿はなく、目の前にいたのは、巨大なジンが拳を突き出している姿だった。
ジンが突き出す拳の先で、岩壁が砕け散る崩壊音が響き、土煙が舞い上がる。
その中に、座り込むジュダルの姿を見つけて、ようやくハイリアは、ジュダルが、ウーゴに殴り飛ばされたのだと知った。
そのあまりの突然の出来事に、ハイリアは唖然として言葉を失い、立ち尽くした。
「んだよぉ……」
がらがらと、崩壊した岩壁をどけながら、ジュダルが苛立ちながら立ち上がった。
その様子を見て、ウーゴは走り出していた。
再び、腕を掲げて彼の元へ迫ると、まっすぐに拳を振り下ろす!
ジュダルに振り下ろされた拳が、防壁魔法を大きく変形させて、再び彼を地面へと沈み込ませた。
地面へ押しねじり込むような強烈な拳に、ジュダルも驚き、叫び声を上げていた。
ジンの拳を押し戻そうとするジュダルの防壁がへこむ中、ウーゴの鉄拳が大きく床を砕き、土煙が舞い上がった。
砕けた床の中から、どうにか這い出して立ち上がったジュダルは、息も絶え絶えだ。
かろうじて直撃を間逃れたらしく、その顔は真っ青だった。
こんなジュダルの姿を見るのは初めてだ。
再び動き出そうとするウーゴをみて、ジュダルは青ざめた顔で叫んだ。
「ちょっと待て! なんなんだよ、その『ジン』は!? 」
ジュダルの制止を聞く様子もみせず、ウーゴは再び拳を振り上げて、彼を壁に叩きつけた。
そして、壁に叩きつけても尚、さらに攻撃を加えようとするジンをみて、ジュダルは慌てて走り出した。
執拗に追ってくるジンを見て、急いで杖にマゴイを溜めている。