第4章 オアシスの異変
「そう……、じゃあ二人とも行っちゃうのね。寂しくなるわ……」
サアサがしんみりと言った。
「まぁ……でも!まだ二人はうちのキャラバンのメンバーだ!! 今日は稼ぐぞー!! 」
ライラが明るい声と共に、眩しい笑顔を浮かべるから、しんみりしていた空気が一気に消し飛んでいった。
キラキラとしたルフがライラの周りを囲んでる。
そうなのだ。四人揃って一緒に仕事をするのはきっとこれが最後だろう。
もしかしたら、今日四人で仕事ができるのは、キャラバン長が気を遣ってしてくれたことなのかもしれない。
せっかく四人そろって露店が出来るのだから、絶対に成功させようと、ハイリアはもう一度気合いを入れ直した。
デリンマーのバザール開催場所に到着すると、町の空気が一変していた。
人がいないのだ。普段なら賑わいを見せているはずのバザールの場所に、露店がほとんど出ていない。
ぽつりぽつりと点在する店舗はなんだか寂しい。
恐そうな、人相の悪い人がバザールの各所にたむろしていて雰囲気がおかしかった。
これはいったい何があったというのだろうか。
「ライラ、なんだか変じゃない? ……こんなに人がいないなんて……」
不安になったハイリアが、ライラを見ると、ライラはバザール内を見渡しながら小さくため息をついていた。
「この先のバルバッドが、内紛で治安が乱れているらしいんだ。その影響で、近隣の街にもゴロツキが流れ込んでくるんだとさ。まさかここまでとは思わなかったけれど、仕方ない。商売は、商売だ。店を開けよう」
内紛ときいて、ハイリアは嫌な気分になった。きな臭い空気は嫌いだ。
ライラに促されたけれど、なんだか気が乗らないまま露店の準備を手伝った。
組み立て式の露店を作り上げると、運んできた荷から果実を取り出し、台に並べる。
ライラの指示で、いつもより並べる商品は少なめだ。