第14章 霧の団
民衆の中へまぎれ、アイツの姿が見えなくなったとたん、ハイリアの中に恐怖が渦巻いた。
見いだしていた希望が、すべて壊されたような衝撃だった。
強烈な眩暈を感じて、思わず座り込んだ。
「ハイリアさん!? 大丈夫ですか!? 」
急に青ざめた表情で座り込んだハイリアに、モルジアナが慌てて駆け寄った。
見つかってしまった、その事実も恐ろしかったが、何よりもアイツが王宮へ向かっているということが恐ろしかった。
せっかく皆が希望を感じているというのに、また絶望が巻き起きるのだろうか。
奴らの闇に呑み込まれて、彼はまた、人を傷つけてしまうのだろうか。
黒い闇が渦巻く争いの中で、傷つき倒れていった、大切な人達のことを思い出して、ハイリアは恐怖に震え上がった。
「どうしたんですか!? 気分が悪いのですか? 」
心配を寄せるモルジアナに、ハイリアは黙って首を横に振った。
「でも、顔色が真っ青です。どこかで休んだほうがいいと思います」
小刻みに震えながら座り込むハイリアの背に手を触れて、モルジアナは優しく声をかけた。
様子をみていたアラジンも頷く。
「先に戻って、休んでもらったほうがよさそうだね。霧の団のアジトには、仲間の人達が待っているし」
「そうですね。では、私が連れていきます。アラジンは少し、ここで……」
「待って!! 」
アジトに戻されると聞いて、ハイリアは慌ててモルジアナの腕を掴んだ。
震えながら、必死の形相で腕を掴むハイリアをみて、モルジアナは目を見開いていた。