第14章 霧の団
「お願いだから、ここにいさせて!! 」
「でも……」
「大丈夫だから、お願い! 一人にしないで……! 」
泣き出しそうなハイリアを見て、モルジアナは戸惑っていた。
「ハイリアさん……。いったい、どうしたっていうんだい? 」
アラジンが戸惑いながら言ったが、ハイリアは、青ざめて押し黙り、首を横に振るだけだった。
理由もわからず、震えているハイリアに、二人は困り果てていた。
「わかりましたから……、少し落ち着いてください」
モルジアナは、そう言って、震えるハイリアの両手を手に取った。
冷たくなった手を、モルジアナの温かな掌が、やわらかく包み込んだ。
「大丈夫ですから。私たちが一緒にいます。ハイリアさんは、一人ではありません」
モルジアナの柔らかな眼差しが、ハイリアをみつめていた。
冷えきっていた指先がじんわりと温かくなり、胸の中にまで温かさが広がった。
不思議と体の震えが収まっていった。
一人じゃない。その言葉が嬉しかった。
気づけば、押さえていた涙が、ほろりと頬を伝っていた。
希望に歓声を上げる民衆の中で、一人涙を流したハイリアを、モルジアナは、何も聞かずに、ただ落ち着くまで抱きしめてくれた。