第1章 真田幸村 両ルート恋度MAX特典「相変わらずの二人」
幸村「はぁっ ・・・はぁ・・・」
冷静さを取り戻そうと、荒い呼吸を繰り返す。
振り下ろされた刀は、男の肩の僅か上でぴたりと止まっていた。
怒りで我を忘れ、目の前が真っ赤になったような感覚。
何とか自分を取り戻したくて、思わずなおを見ると、
「・・・」
なおの瞳から、涙が一粒こぼれた。
その瞳が見つめる先は幸村ではなく、
幸村「・・・っ」
幸村が、視線の向けられた自分の足を見下ろす。
牡丹の胸飾りが、無残に踏みにじられていた。
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幸村「なお、起きてるか」
小さく聞こえる声に、
「うん」
答えると、静かに襖が開く。
幸村「悪い。起こしたか」
「ううん、起きてた」
布団の上で身を起こしたなおの脇へ、幸村が腰を下ろした。
幸村「・・・」
触れていいものか、動けずにただなおを見つめていると、
「ごめんね、また助けてもらっちゃって」
「バカ、何でお前が謝るんだよ!」
強く抱きしめると、なおの腕がそっと幸村の身体に回される。
幸村「怖い思いさせて、ごめん」
声が震えた。
幸村「俺の傍にいれば、もしかしたらまたお前を危ない目に遭わせるかもしれない。だけど・・・」
首筋にかかる幸村の声が、熱い。