第4章 佐助 二人の恋心「特別ストーリー」
「!?」
突然のことに、なおの肩が僅かに跳ねる。
(気のせい・・・かな)
目の前では幸村が夢中で話し続けている。
謙信と信玄の笑い話、先が気になる、けど・・・
「!!!」
勘違いではない。
何かが、否、誰かが膝に触れている。
何とか相槌打ちながらも、ちらりと佐助を見遣る。
佐助「・・・」
佐助もまた、無表情で幸村の話を聞いている。目線は真っ直ぐ、幸村で。
(え・・・佐助君、だよね?)
膝に触れている指先。
軽く撫でるように動き、それが腿へと徐々に移動して、
「わっ・・・」
思わず小さく声が出る。
幸村「あ? どうしたなお?」
「ううん、 あの・・・なんでもない」
慌てて首を振り、幸村に微笑む。
幸村「でさー、そのあと謙信様が箸を鼻の穴に・・・」
話が全く耳に入ってこない。
「・・・っ」
そっと佐助の顔を伺う。
佐助「・・・」
一瞬眼鏡が光ったのは、気のせいだろうか。
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「あ、あのっ」
思い切って声を上げる。
「ごめん、ちょっと飲みすぎちゃったみたいで。お水飲んでくる」
そう言って立ち上がると、
幸村「お前顔真っ赤だぞ、大丈夫か?」
幸村も立ち上がろうとする。
幸村「場所分かるか?ついて行ってやる」
「大丈夫、佐助君に教えてもらってるから」
慌てるようにして部屋を出る。
早足で廊下を進みながら、
(どうしよう、てゆうか佐助君、何であんなこと・・・)
胸の鼓動が頭の中にまで響く。
(とにかく、お水飲んで少し落ち着こう!)
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幸村「佐助、もっと飲むか?」
佐助「いや、俺はもういい。それより・・・」
幸村「じゃあ、そろそろお開きにするか」
佐助「え・・・」
ゆっくり立ち上がり、佐助を見下ろす。
幸村「行ってやれよ、なおのところ。心配だろ?」
手際よく辺りを片づけ、さっさと出て行ってしまった。
佐助「・・・友人を侮っていた」
幸村は気付いてる。
もしかしたら、俺自身より先に気付いていたのかもしれない。
この気持ちに・・・