第4章 佐助 二人の恋心「特別ストーリー」
佐助「なおさん・・・」
肩に回された腕に僅かに力が込められる。
「・・・っ」
見つめ合う二人の顔が更に近づき、
(うそ、これって・・・)
なおの心臓がバクバクと動き、寒さも吹き飛ぶ。
顔が熱い。
このまま、佐助君と・・・
佐助「まずい」
突然佐助の腕がなおの肩を押し、身体を離す。
寄り添うようにして座っていた佐助が瞬時に体をずらし、なおとの間に距離を作った。
途端に、二人の間を冷たい空気が満たす。
「あの・・・?」
佐助「なおさん、顔が赤い。バレる・・・」
言い終わらないうちに、突然襖が開いた。
幸村「佐助、邪魔するぞー」
「っ!!」
笑顔を浮かべた幸村が姿を現す。手には酒と杯。
幸村「今日は冷えるなー。なおも来てるっていうから、一緒に一杯やろうと思ってさ」
屈託のない笑みを浮かべ、当然のようになおと佐助の間に腰を下ろす。
幸村「しかし、お前が作った炬燵は最高だな!」
布団を引き寄せ、幸せそうに温まる。
佐助「・・・」
一瞬眼鏡が光ったのは、気のせいだろうか。
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幸村「それで俺は信玄様に言ったんだよ、いい加減にしてくださいって」
空いた杯に酒を注ぎながら幸村が饒舌に語る。
佐助(早く帰らないかな)
ちらりとなおを見遣ると、頬を赤く染め、にこにこと幸村の話を聞いている。
いくらか酒を飲んだなおの目はやや潤み、火照った顔が愛らしい。
そしてその笑顔は今、幸村に向けられている。
佐助(面白くないな)
なおの意識が幸村に向いている、それだけでイライラしてしまう。
この感情は・・・
酒のせいであまり頭が回らない。けど、多分きっと。
佐助(確かめてみよう)
炬燵の中で、そっと佐助が手を伸ばす。