第3章 上杉謙信 謙信誕生祭~抑えきれない感情~
なおは今、穏やかな寝息を立てて俺の腕の中で眠っている。
事が終わり、着物を纏おうと手を伸ばすなおの腕を捉え、帰る事すら許さなかった。
温かく、柔らかな肌。
優しく髪を撫でれば、軽く身じろぎ、俺の胸に顔を埋めるようにすり寄ってくる。
頬にかかる髪を耳にかけ、そっと口づけた。
「なお・・・」
思わず呼びかけた、自分の声の穏やかさに驚く。
今自分の顔を見れば、より驚くだろう。
こんな風に笑えるのは、なおの前だけだ。
夜が明けたら送るから、それまではと言えば、
『朝まで、そばにいますね』
少し困ったような、だが幸せそうな表情で俺の腕の中に納まった。
白み始めた空を恨めしく思う。
帰してしまったら、なおは俺の元へ戻ってくるのだろうか。
「んん・・・ 謙信様・・・ ふふっ」
呑気に寝言を言うなおに、俺らしくもなく吹き出しそうになる。
可愛い女だな。
胸に湧く愛おしさをなおに伝えたくて、その唇にそっと口づけた。