第5章 紫原 敦
初っ端でまさ子ちんに怒涛の説教を喰らった以外はいつも通りだった。
朝練終わりのまいう棒を食べながら教室へ向かっていると、下駄箱のとこで松葉杖をついたアイツが居た。
「何それ……」
「ん? あ! 敦! 久しぶりだねぇ~♪ 元気に……って、敦、泣いてる?」
「はっ、泣いてないし、気のせいだし……」
「そんなにまいう棒が美味しかったの?」
「それ、どうしたの……」
俺は、頬に光る水滴を拭いながら彼女に訊ねた。
最後に会った時より更にボロボロだった。
「ちょっと、転んじゃって……」
「転んだくらいじゃ、足折れないよね……」
「転んだ拍子に階段から落ちちゃって……」
彼女はまた、俺の顔を見なくなった。