第3章 日向順平
「他に見たいトコあるか?」
「ううん、もう満足だよ♪」
千穂はサチオさんの入った袋に頬ずりしている。
どんだけこんな人形に愛着わいてんだコイツは……。
「じゃ、じゃぁ……帰るか?」
「そうだね~、日向君はもう大丈夫?」
「まぁ、買うもん買ったし……問題ねぇ」
「そっか♪ じゃぁ行こう?」
そう言って千穂は手を出してきた。
「ほら、また迷子になっちゃうといけないから、ね?」
「お、ぉう」
改めて聞くと……俺はこんな恥ずかしい事言っていたんだなと気付かされる。
千穂の手を掴み歩き始めた。
「ねぇ、日向君……」
「ん? どした?」
隣を歩く千穂が尋ねてくる。
「あのさ……」
「うん……」
「どこから来たっけ?」
「はぁ!?」
衝撃の事実。
俺の手を引いて歩いているから出口がわかっているものだと思っていたが、千穂は方向もわからずに歩いていたというのだ。